あっちから変なの出てきた

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第六章 【 ユーナの冒険譚 その2 】 


「その漁村なら、誰もいなかったぞ」
 密林を出たところで、ふとイイ・シトがつぶやいた。コロタリの故郷である漁村へ向かう相談をしていたユーナとレシェラの会話を聞いていたのだ。
 密林を出たといっても、森は続いている。だが、歩くのも困難な密林と違い、立ち並ぶ木々もまばらである。
「いなかったって、どういう意味ですか?」
 ユーナが不審そうにたずねると「意味もなにも、そのままの意味だ」と答えるイイ・シト。
 ユーナは思わずレシェラを見る。見られても……と困惑するレシェラ。
「廃村の様相だったぜ。昨日今日の話じゃない。人がいなくなってしばらく経ってる。そんな様子だった」
 いない? コロタリの家族も……。
「その漁村は、ユーナの故郷なのか?」
「いえ……友人の漁村です。友人に頼まれて、伝言を伝えに行こうと」
「伝言?」
「友人のご両親に、彼女が元気でやってると伝えに……」
 イイ・シトは感慨深げもなく、肩を竦めて見せる。
「そりゃ残念だな。そこには誰も居ないしなにもない。間違いないぜ。この目で見てきたからな」
 ユーナは立ち止まる。いない? どうして? 村は滅んでしまったのか。住んでいた人はどこに?
 このままじゃコロタリとの約束を守れない。どうしよう。
「ユーナ、迷うな」
 レシェラが足元でユーナを見上げている。
「自身の目で確かめるのが先決であろう。先のことは行ってから考えれば良い」
 レシェラに諭されて、ユーナは再び漁村へと歩みを進めた。イイ・シトが後をついてきながら「本当だぜ。行っても無駄だ」と繰り返す。
 まるでイイ・シトは、ユーナが漁村に行くことをとめようとしているかのようだ。漁村に行くとイイ・シトにとって不都合なことでもあるかのように。
 漁村にたどり着くと、イイ・シトの言っていたとおりだった。森の切れ目に寄り添うように存在する漁村は、いくつかの住宅が存在していたものの、どれも廃屋の様相だった。
 人の気配もなく、雑草が生い茂り、半壊した建物に取り囲まれたユーナは絶望感に打ちひしがれていた。
「珍しくもない光景だ。二ツ目族の住処なんて、三ツ目族や盗賊に荒らされて滅ぶなんてよくある話だろ」
 ユーナはイイ・シトの話を無視して、村中を歩き回る。十分もすれば一周できる小さな集落である。人の痕跡を探して彷徨い歩いたが、結局なにも見みつけられなかった。
「三ツ目族か盗賊にやられたのさ。あきらめな」
「でも、襲われたのなら遺体があるはずです。そんなのどこにもありません。ひょっとして集落を移したのかも。もう少し周囲を探してみます」
 そう言って歩き出したユーナをイイ・シトが呼び止めた。振り返ると、イイ・シトは苦々しそうに顔をしかめていた。
「ち、仕方ねえな。ちょっと付いてきな」
 あごをしゃくってみせたイイ・シトは一人でつかつかと歩いていってしまった。思わせぶりな態度にユーナは後をついていく。
 岩場に挟まれた通路のような場所を進むと、急に周囲が開けた。
 目の前には砂浜が広がっていた。その向こう側には色彩の無いの海。曇った寒空に海は物悲しげな銀色に染められている。
 風が氷のように冷たい。ユーナが身震いして肩をすくめたころ、イイ・シトが黙ってある方角を指差した。
 指された方角に目を移すと、砂浜に立てられた何本もの棒がみえた。等間隔に砂浜に突き刺された棒は、どれもユーナの身長ほどある。三十本近くあるが、何のために立てられたものか分からない。ひょっとして、漁猟に使用する道具だろうか。
 おもむろにイイ・シトが歩き出す。あわてて付いていくと、イイ・シトは一本の棒のそばで立ち止まった。
「見てみろ、棒に名前が刻まれてる。こいつはレイラ・レイル。女らしい。年齢は十五」
 そして、そばに立つ棒を指差すと「そっちはクルナ・レイル。八つの男の子。テイジ・レイル、ジーナ・レイルは両親だろう」と口ずさみ、ユーナを振り返る。
「ここは墓場だ。あの漁村に住んでいた人間の」
 ユーナはぞっとして足元を見た。この下に、漁村の人々が眠っている。無遠慮に墓を踏みつけていることに気づき、ユーナはあわてて棒から距離を置く。
「ひとつの棒に布がかけられててな。そこに漁村の最後の生き残りだった少年のメッセージが書かれてたよ。どうやらこの漁村は、三年ほど前に正体不明の化け物集団に襲われたらしい。化け物と形容していたが、おそらくさっき俺たちが鉢合わせた、あの鎧をまとった異形の者のことだろう。村民は一人残らず化け物に食い殺されたそうだ。女子供関係なく。メッセージには最後に生き残った少年のことも書いてあった。少年は利き腕を食いちぎられ、全身の肉を食いちぎられた状態で三十人の墓を掘って、遺体を砂浜に埋めたそうだ。少年は自分も長くないと知っていたんだろう。自らの墓も掘って、自分自身を砂浜に埋めたそうだ。「この身は雨風が運んできた砂によって埋められるだろう」と、最後にそう締めくくられてた」
 ユーナは愕然と周囲を見た。
 ひっそりと冷たい潮風にさらされながら佇むいくつもの棒。その棒たちが恨めしそうにユーナを睨み付けているような気がした。
「この漁村は滅んだんだ。生き残りは一人も居ない。ユーナの探している友人の家族も、もちろん、な」
 波が砂浜をたたきつける音だけが、ユーナの全身を埋めた。なんて悲しい風景だろうか。なんて悲劇的な風景だろうか。
 ここでは慟哭の声しか聞こえない。悲鳴、嗚咽、呻き。苦しんだ断末魔を教える苦悶の表情が、無数の棒から浮かび上がってくるようだった。
「こんなところには長居しないほうがいい。悪い空気に満ちてるぜ。さっさと次の目的地に向かったほうが無難だ」
「ま、まだです」
 ユーナは振るえを押さえ込むように拳を固めた。
「まだ、コロタリの家族が亡くなったって決まったわけじゃありません」
「強情なやつだな。じゃあ、そのコロタリってやつの家族の墓があるか確かめてみろ。コロタリの姓は?」
「ハインココ……」
「じゃあ、日暮れ前までにハインココ姓の墓を探して来いよ。さっき化け物に遭遇して分かってると思うが、この辺一帯は危険だ。日が完全に暮れる前に廃屋に身を潜めたほうがいい」
 ユーナは悲壮な思いで墓地をうろつき始める。ハインココ。墓の中にその姓があったら、私はどうしたらいいんだろう。コロタリが死に際残した遺言。私はそれを守れないことになる。
 はたして、探し始めて数分でハインココの墓を見つけてしまったのだった。ハインココの墓は、寄り添うように三つたっている。
 ユーナは思わず涙をこぼし、墓の前に膝を突いて崩れ落ちた。
 こんな悲しいことがあっていいものか。コロタリは家族を憂いで死に、その家族はすでに三年前に亡くなっていた。人々の思いがつながらず、断裂する。沢山の人々がそれぞれの大切な人を想い、その想いが離れ離れの人々を繋いでいたと思っていたのに、この世界はこんな悲しいことばかりだ。
 両手で顔面を覆って慟哭するユーナに、レシェラが静かに言った。
「約束は守った。そう考えろ。ユーナは確かにコロタリの遺言を果たすためにここまでやってきた。コロタリの最後は無念だったかもしれんが、約束を果たすためにここまでやってきたお前に、コロタリは感謝こそすれ、恨んだりはしないだろう」
「でも……」
「少なくとも、コロタリは死んだ後、あの世で孤独ではないということだ。死後の世界ではコロタリの家族が待っていたんだからな。それだけ分かっただけでも十分であろう」
 優しい言葉。でもレシェラ。ちがうの。
「悲しいの、レシェラ。コロタリは死んでしまった。でも、同じ血を持った人が居れば、きっとコロタリは死んでしまったことにはならないの。血を分けた誰かが生きてる。両親でも兄弟でも子供でも生きていれば……。でも、コロタリの家族はみんな死んでしまった。何も残ってない。コロタリを覚えている人が誰もない……」
 レシェラは何も答えなかった。
 しばらく時が過ぎ、遠くの空が赤らみ始めたころ、レシェラがユーナに寄り添って口ずさむ。
「コロタリのことなら、ユーナが覚えておる。それで十分であろう」
「……自信がない」
「自信?」
「私……唯一コロタリを知っている私が、ずっと生きていける自信が……」
 レシェラは今度こそ、何も答えなかった。
 
 
 
 日が暮れる前に、ユーナとレシェラ、イイ・シトは廃村にもどり、割と状態の良かった廃屋に身を潜めた。
「おぬしは、こんなところでいったい何をしていたのだ」
 身を潜めて、落ち着いたころ、レシェラがおもむろに尋ねた。寝床を作っていたイイ・シトが「俺のことを言っているのか?」と自分を指差している。
「ほかに誰がおる」
 イイ・シトが右見て、左見て、なるほどと頷く。
「まあ、そりゃそうか」
 イイ・シトは持っていたバッグから奇妙な素材の布を取り出すと、マントのように羽織った。
「俺は、魔の森に用があってやってきた」
「魔の森……」
 やはり、あそこは魔の森だったか。だが、レシェラの記憶では、魔の森は政府が役所を立てて、立ち入り禁止区域に指定していたはずだ。周囲を有刺鉄線で囲み、立ち入れないようになっていたはずだが……。
「魔の森などに、何の用があるというのだ」
 再びたずねると、イイ・シトはバッグから干し肉を取り出し、かじりつきながら答える。
「魔の森が政府の役所になっている理由を知ってるか?」
 ――理由。
 表向きには、危険地帯を封鎖する目的だと聞いたが、実際には違うことくらい、レシェラも察しが付いている。
「あの森が魔の森と呼ばれるようになったのは、誰も近づかせないようにするために政府が作り出したデマだ。あそこは魔の森などではなく、俺は神秘の森だと思ってる」
「神秘とは、どういう了見だ。われわれは実際に森で魔物のような怪物に出会ったではないか」
「確かに……。あれは俺も予想外だった。本当に異形の者が居ようとは……」
「それより、なぜ神秘なのだ。理由を教えろ」
 イイ・シトはずいっと身を乗り出して、怪しげに笑みを作ってみる。
「あの場所はな。なにやら怪しい空気が濃い場所なんだよ。感じたこともないような、精神を汚染しそうな有毒な何かが充満してる。それが何かって言われても分からないが、確かだ」
 冒頭から神秘とは程遠い話の内容。
「でもな、その怪しい空気が関係しているかどうかは分からないが、あそこには奇妙なものが落ちてる。たくさんな」
「奇妙なもの?」
「見たこともない道具や書物、それに何らかの機械の部品や、精密な回路」
 イイ・シトは極上のご馳走を前にしているかのように目を輝かせている。
「おそらくな、旧世代の遺跡じゃないかと思ってる。落ちているものの中には一般人には見せられないような高度な技術や、情報が存在するに違いない。だからこそ、政府はあそこを封鎖しているのさ」
「そんなもの、落ちているところを見なかったぞ」
「拾い集められてしまってるだろうな。だが、不思議なことに政府役人が何度もあの森に落ちているものを回収しようと、いつの間にかまた落ちているのさ。だからこそ、神秘の森。あそこは宝の山だ」
 レシェラは猜疑心をぬぐえない。高度な技術? 先進的な情報? そんなものがレシェラも滞在していたことのあるこの村のそばにあったなど、信じられるものではない。
「俺はそのお宝探しに来たのさ。そこでお前らに会った」
「……イスカ領域……」
 ふと、レシェラの背後から、ユーナのか細い声が聞こえた。振り返ると、顔を伏せていたはずのユーナは空中を見つめている。
 イイ・シトが「なにか言ったか?」とたずねると、ユーナの焦点がイイ・シトを捉える。
「イスカ領域……森に入ったときの、あの奇妙な感覚……あそこは」
「イスカ領域?」
 そう首をかしげたのはレシェラだ。
 ユーナは苦しそうに眉をひそめる。
「私が……異世界から渡ってきた空間の穴。あそこにイスカ領域がある」
「ちょっと待て。意味が分からない。異世界から渡ってきた?」
「私は異世界に行って、帰ってきたんです。今から一ヶ月以上も前」
 イイ・シトは呆然と口を開いた。しばらく硬直していたようだが、次には思い出したように噴出した。
「どうも変わったやつだとは思ってたが、ここまで不思議少女だとは思わなかったぜ。異世界に渡って帰ってきた?」
「はい」
 レシェラはあえて黙っていた。前にユーナが異世界に渡って帰ってきた話は聞いていたが、レシェラも完全に信じたわけではない。だが、ハザマの世界、要するに異世界に近い場所に住まう眷族にとって、異世界の存在はそれほど突飛な考えでもないのである。
「本気で言ってるのか?」
 いつの間にか真顔になっていたイイ・シトが低い声でたずねるが、ユーナは「はい」と頷いただけ。
「百歩譲って魔の森に、その異世界へ通じる穴があったとして、その穴を見つければ、俺も異世界に行けるってことか?」
「いえ……そういうわけでは。たぶん、自然界にあるイスカ領域では、人が通れるほど穴が大きくないと思います」
「お前は『人工的に異世界への扉を開いた』と言っているように聞こえるぞ」
「そうです。奇妙な装置で、異世界に渡るための次元の穴を開けて、異世界に渡ったんです」
 今度は笑い飛ばさないイイ・シト。信じたわけではないだろうが、ユーナが嘘をついているとも思えない、そんな顔。レシェラは気持ちが良く分かる。ユーナは抜けてはいるが、嘘をつくような人間に見えず、言葉足らずだが、発せられる言葉には根拠もなく説得力がある。
「じゃあ、異世界には何があったっていうんだ」
 イイ・シトが追求する。すると、ユーナは悲痛そうに眉をひそめ、目に涙をためる。異世界に渡ったときに世話になった青年とやらを思い出したのだろうとレシェラは察した。ユーナはこれまでも、幾度となく異世界で分かれた青年のために涙を流した。まるでユーナが生きるために必要な身体の一部だったかのように、いつまでも失われた部分を憂いでいる。
「異世界には人が沢山います。私たちと同じ、二ツ目族が住んでいる世界です。私たちよりも通力が弱く、でもモノの仕組みを良く知っていて頭の良い人たちです。見たこともない不思議な機械や、技術、建物をたくさん見ました」
 イイ・シトはユーナの言いたいことを理解したようだ。
「するとユーナ、お前はこういいたいわけだ。魔の森に落ちている道具や機械、書物は異世界のものだと? イスカ領域とやらを通って、異世界からこの世界に飛ばされてきたもの」
 ユーナは黙ってうなずいてみせる。
「なんとなく、分かってきました。なぜあんなに高度な機械があそこにはいろいろあったのか」
「あそこ?」
「見たこともない機械……見たこともない技術……あれば、きっと異世界の技術だったんだ。異世界に渡るための機械も、すべて」
 不可解そうな顔のイイ・シト。レシェラは察しがついているが、あえて口をつぐむ。つぐんでいるが、視線は注意深くユーナを観察していた。
 あの顔は、何かを考えているときの顔。なにを思いついた? そして、何をしようとしている?
 
 〈 幕間 〉
 
「なぜミユナなのです」
 いまから四ヶ月ほど前のこと。
 まだユーナもナユタも現世に送られる前のことだ。
 クロスはヴァルアラトスに尋ねた。
 直径にして五十メートルほどのドーム上の建築物の中。ある研究施設であるが、外見も球体を半分地中に埋めたような形状をしている。内部から見れば、外見よろしく、半分に切った球体を中から眺めたようなつくり。
 ただし、ドームの中央には物々しい機材が立ち並び、この研究施設がただものではないことを物語っている。
 ドームの中央にはステージのように高台の舞台が設けられており、その周囲を取り囲むようにして、四基のラッパ状の機材が中央に口を向けている。ラッパ状といっても音を出す機械ではなく、その口から発するのは巨大な揚力。揚力をそのままの意味で捉えることはできないが、力の流れをたとえるなら揚力である。
 いま、四基のラッパ状の機材に取り囲まれるようにステージに立つのはミユナとその弟であるナユタ。ミユナはナユタの肩を抱き、不安そうに眉をひそめている。
 それを高台に聳える見学台から様子を見下ろすヴァルアラトス。その隣でクロスはミユナを異世界に送り届ける判断をしたヴァルアラトスの目的が読めないでいた。
「ミユナが行くことに意味があるからさ」
 ヴァルアラトスはそれだけを答える。
「ミユナには何の能力もありません。特に秀でた専門知識があるわけでもなく、訓練さえ受けさせていません。それに同行するのが幼いナユタ」
「能力がないからこそ適任なのだ。ナユタを同行させるのは、ミユナに目的を遂行させるため。いわば人質のようなもの」
「ヴァル様は何を得ようとしてるのですか? 異世界でミユナに何をさせようと?」
「お前の知るところではない」
 ヴァルの語気が強くなった気がして、クロスは恐縮して頭を下げる。
 不可解である。ミユナは王族であるが、扱いは奴隷に等しい。実験道具として使用するならまだしも、ミユナには異世界にわたって無事に戻ってくるという使命がある。これは大役である。
 眼下では「異世界へ渡るための各種機材」の調整に、研究員たちが走り回っている。この機械を研究、設計、開発したのはすべてヴァルアラトス。これが出来上がるまでに一体なんにんの二ツ目族が消費されたのか。
 中には無事異世界に渡りきったものもいるかもしれないが、九割以上は体を四散されるか、ハザマの世界に取り込まれるかという結末をたどったと思われる。
 ようやく安定した「次元径間鑽孔装置」は、いまやヴァルアラトス本人さえ通れるほどに精度が上がっているだろう。だが、まだ机上の理論どまり。実際、ヴァルアラトスが通っても問題ないとは、まだ証明できていない。
 それに、最大の問題は場所である。異世界のどこの座標に降り立つかの調整はまだできないのだ。要するに、穴はあけることはできても、物体を思った場所に「送信」する機能はない。人が自ら徒歩で穴に入り、たまたまあいた向こう側の穴から出るしかない。
「ミユナには何よりも重要な役割がある。そして、このタイミングで送り出すことに意味があり、それ以外では意味がない。一時でいい。ほんの一瞬だけ、運命を操作する。だが、その一瞬の小さな小さな運命の操作が、やがて壮大な変革をもたらすことになる」
「運命……ですか?」
 運命などというあいまいな概念を、ヴァルアラトスが口にするのが意外だった。実験、実地、証明という事実観念に基づくヴァルアラトスの信念を間近で見ているクロスだけが感じる違和感。
 今までとは違う。
 なにか、クロスの想像もよらないことを実現しようとしている。そのプロセスとして「次元径間鑽孔装置」があるだけ。
 ヴァル様は一体、何をしようとしているのか。
 
 
 
 一ヵ月後、ヴァルアラトスが自ら異世界に渡ると言い出した。もちろん、この「次元径間鑽孔装置」のことは周囲の人間に極秘に進められていることはおろか、ルルアラトス王も知らないのである。
 ヴァルアラトスが極秘裏に一人で進めてきた。知っているのはヴァルアラトス直属の護衛であるクロスと、数人の研究技師だけ。だからこそ、異世界へ渡ると言い出したヴァルアラトスを止めるものなど、一人もいない。
 だからこそ、「次元径間鑽孔装置」にたつヴァルアラトスに対して、クロスはただただ声を上げることしかできなかった。
 研究員に転送の作業を進めさせながら、ヴァルアラトスは冷ややかにクロスを見下ろす。
「最初から計画していたことだろう。ミユナから報告を受けなければならん」
「ミユナ?」
「そうだ」
「ミユナ……恐縮ながらヴァル様……ミユナとは?」
 クロスがたずねた瞬間、ヴァルアラトスが猜疑心の目をクロスに向けた。そんな目を向けられることなど経験がなかったクロスは動揺して顔を伏せた。
「何を言っている、クロス」
 クロスは答えられない。突然、ヴァルアラトスから聞いたこともない人間の名前が飛び出てきたのだ。当然、それは誰なのかと疑問に思う。だが、まるでクロスが知っている人間であるかのように「ミユナ」の名をくちにしたヴァルアラトス。
「ミユナをつれて帰ってくる。それは前々から計画していたことだろう」
 計画……なぜだ。なぜ、ヴァル様はそんなことを? そんな計画など聞いたことがない。忘れているだけ? まさかそんなはずは。ヴァル様が計画なさったことを忘れるわけがない。とすればヴァル様の勘違いだろうか。
 いずれにしても、疑問を口にすることはできない。
「……それならば、私でもいけます」
「お前は一瞬たりとも宮殿を離れることはならない。ほんの短い間さ。一時間もせずに戻ってくる」
 ヴァルアラトスがそう言い出したのだから、それを覆せるものは誰もない。王でさえヴァルアラトスの意のままである以上、この国にヴァルアラトスに反抗できるものなの皆無なのだ。
「それならばせめて私をおつきで」
「私とお前の二人を通すだけの穴はあけられん」
「ですが……」
 なおも食い下がろうとするクロスを無視して、装置はうなり声を上げ始める。
「下がっていろ、クロス。巻き込まれて狭間の世界に取り込まれるぞ」
 クロスは観念して、舞台から退いた。
 クロスは苦々しく歯軋りするしかない。どうしてヴァル様は何も教えてくださらないのか。いったい、あのお方は一人、何をしようとしているのだろうか。
 異世界の存在は以前から仮説が立てられていたが、死後の世界よろしく、どれも想像の域を出ない夢物語だった。
 それを、異世界の存在を疑いもせずに、知られれば嘲笑されそうな「異世界転送」の技術を何十年も研究し続け、誰にも知られることなく装置を完成させたヴァルアラトス。
 まるで、異世界が存在すると知っていたかのようだった。微塵の疑いも見せずに研究を推進する姿を見れば、クロスの疑念も当然といえる。
 ヴァルアラトスは確かに「異世界」が存在すると知っていた。知っていれば研究に疑問を抱くこともない。
「ミユナとはいったい誰なのですか? いったい、あなた様は何をなさるおつもりなのです……」
 クロスのつぶやきは、ヴァルアラトスの転送とともに狭間の世界に吸い込まれていった。
 
 
 
 やがて、約束どおりヴァルアラトスが戻ってくるまでの一時間、クロスは生きた心地がしなかった。
「次元径間鑽孔装置」は発動すると、虹色の光を発する。それが「穴」であるが「穴」は二時間ほどしか開いていない。世界の復元力が穴を閉じようとするのである。
 クロスはじめ、研究員たちが転送装置に近寄っていくと、戻ってきたヴァルアラトスのそばには、女と幼い男児。
 戻ってきたヴァルアラトスに一礼すると、クロスは言った。
「無事にお戻りになられて、小生は安堵しております。戻られなかったら腹を切る所存でございました」
「まさか。戻れぬリスクを負うほど阿呆ではない。それより、ミユナより報告を受けよ。ナユタは休ませておけ。私は少し休む。五時間後に私の部屋来い、クロス。ミユナからの報告を私に知らせに来い」
「御意」
 頭を下げるクロスは、再びヴァルアラトスが口にした「ミユナ」の名を疑問に感じた。
 ヴァルアラトスのそばで、現を抜かして放心する女が、おそらくヴァルアラトス様の言う「ミユナ」であろう。ところが、顔を見てもクロスには心当たりがない。発せられる気配は二つ目族そのもの。
 ヴァルアラトスは「ミユナ」と「ナユタ」をクロスに預け、施設から出て行った。クロスは命じられたとおり、ナユタを休ませ、ミユナから報告とやらを受けるために別室に連れて行った。
 ドーム上の施設にある控え室のような場所である。机を挟んで放心状態のミユナと向かい合う。
「報告を受けよう。お前はヴァル様より命を司っていた。間違いないな?」
 そうたずねると、ミユナの焦点がクロスに合った。
「もう一度たずねる。ヴァル様より受けた命から聞こう」
「私……」
 ミユナが呆然と口を開く。
「ここは……どこですか……?」
 いま目覚めたかのような様子。
 なるほど、呪具か。ヴァル様に忠実であるよう、施術が仕込まれている。ヴァル様が報告を自分に命ぜられたのはそのせいか。
「ここはユベリア宮殿内の、ある施設だ。君はヴァル様の命により、異世界へ渡航した。間違いないな?」
「あなたは……クロス……」
 俺の名前を知っている? どういうことだ。俺はこの女をまったく知らない。
「お前はいったい何者だ。どうして異世界へ渡航するなどという重要な任務をヴァル様はお前に与えたのだ」
「私にもわかりません……。ただ、異世界で一つ目を覚醒させることが私の勅命」
 ミユナはそう言うと、頭痛に耐えるように頭を抱え込んだ。
「なんてこと……! 私はあの人に何も言わず、戻ってきてしまった……!」
「あの人? ミユナ、どういう意味だ?」
「どうして……ヴァル様の気を感じたとたん、私は私でなくなった……。あんな形であの人と別れるなんて」
 クロスはこぶしを振り上げ、思い切り目の前にテーブルにたたきつけた。派手な音を立ててテーブルが振動すると、ミユナは悲鳴を上げて仰け反った。
「俺の質問に答えろ、ミユナ。お前には報告の義務がある。俺には報告を受ける義務がある。異世界で体験したことを、包み隠さずすべて俺に話せ」
「……ミユナではありません」
 ミユナが小さな声を出す。
「なんだと? もう一度言ってみろ」
「ミユナではないといっているんです」
 ミユナじゃない? いったいどういう意味だ。
「私はユーナです。姓はありません。ただのユーナです」
 ミユナはきりつけるようにクロスをにらんだ。にらまれたクロスは微塵も動揺することはなかったが、不可解には思った。
「お前は何者だ。二つ目族であるのは間違いない。連れ立っていたナユタという男児はお前の兄弟か?」
「私は……」
 ミユナはそういったきり、口を閉ざした。何だというのだ。この女は何者で、いったいなぜ口を閉ざしているのだ。
「どうした。続きを言え。「私は」なんだ?」
「答えたくありません」
 答えたくないだと?
「貴様、それがどういうことかわかってるのか? お前がヴァル様より選ばれて、異世界へ派遣された経緯は知らないが、口を閉ざすということは重大な反逆行為とみなされるぞ。命が惜しくないのか」
「命など惜しくありません。一度失った命。私はこの命をあの人のために……そう誓っていたはずなのに……」
 クロスは想像する。異世界に何が存在するかなどクロスにはまったくわからないが、おそらく異世界にはミユナと同等の生物が存在しており、情が移るほどの意思の疎通が可能であり、ミユナはまんまと異世界の生物に肩入れしてしまったということだろう。
 おろかな。おろかであるが、なぜヴァル様はそのような移ろいやすい二つ目族に重要な役割を与えたのか。
「隠していても、いずれしゃべることになることがわからないのか? 二つ目族に同情などするものはいない。拷問で余計な痛みを与えられ、反逆者の汚名をかぶって処刑される結末をたどるだろう。−−今なら、何も聞かなかったことにしてやる。報告するのだ、ミユナ」
「いやです。わたし、何も話しません」
 この場で追求しても話をしそうにない。残念だが、ひどい拷問で口を割らされた上に、残酷に処刑されることは逃れようもないようだ。
 あらゆる苦痛を味あわされ、口を閉ざし続けることは不可能であろう。拷問の半ばには「殺してくれ」と懇願するようになる。
 クロスはしつこく追求はしなかった。黙って席を立って部屋を出ると、そばにいた研究員にミユナを投獄するように伝えた。
 
 
 
 その後、クロスはヴァルアラトス城に戻り、いくつかの書類整理を済ませた後、指定された時間通りヴァルアラトスの個室に赴いた。
 鏡のように磨かれた大理石の廊下を歩く。天井は目がくらむほど高く、廊下の幅はクロスが三人両手を広げてもありあまるほど広いが、そこを歩くのはクロスのみ。
 途中、場内を警備する部下や使用人とすれ違ったが、この広い場内にはほとんど人がいない。
 副王の城のせいで、ルルアラトス王城ほど警備も厳しくなければ使用人も少ない。
 窓から明るい日差しがさす一方、強烈な静寂が妙な物悲しさを感じさせる。ふと幼いころのトラウマを思い出したかのように胸が騒がしくなる。
 クロスは立ち止まった。
 大ホールのような廊下の途中、使用人が使用する通路があった。人一人が通るのがやっとな薄暗い廊下である。
 廊下の奥は暗闇に溶け込んでいたが、暗闇を目撃して、ふと思い出したのだ。以前にいた、クロスの直属の部下のことを。
 名をラリルドという。二年前に勅命を与えてから、帰ってこない。頭は弱いが、能力の高さを買ってそばにおいておいた部下である。どこかで野たれ死んでいるのか。
 与えた勅命というのも、ヴァルアラトスからの指令である。思えばあの命令も不可解だった。一人の少女を捕らえよとうもの。なぜその少女を捕らえる必要があるのか、まったく理解できなかったし、少女の素性もわからない。わかっているのは少女のプティシラという名前のみ。
 だが、ヴァルアラトスは何よりも重要な使命として、クロスに命じたのである。慎重を期してラリルドを差し向けたが、一年ほど前から音沙汰がない。ヴァルアラトスの勅命であるからには達成は必須。さらに部下を差し向けてラリルドと少女を探させたが、発見できなかった。
 等のヴァルアラトスはそれほど剣幕も立てず、悠長に構えている。ひょっとして、この勅命には裏があり、「プティシラを捕らえる」という命令の裏には別の思惑があるのではないかと勘ぐってしまう。そうでなければ、勅命にもかかわらず、達成を促しもしなければ、いまだに捉えることのできないクロスへの罰則もない。
 本当は捕らえることが目的ではない?
 クロスはヴァルアラトスの事務室にたどり着くと、木造の扉をノックした。すぐに室内から「入れ」の声。
 木製の厚い扉を開くと、事務室内には奇妙な道具や書類の山。それらに埋もれるようにして、机に向かっているヴァルアラトスがいた。
「ヴァル様、ご報告に伺いました」
「ああ。聞かせてくれ」
 ヴァルアラトスは机上に置かれた書物をにらみつけたままだ。
 クロスは恐縮して言った。
「恐れながら、ミユナは口を閉ざしたまま、何もしゃべろうとはいたしません。何度も説得を試みましたが」
「うむ。やはりそうか」
 ヴァルアラトスは書物を閉じ、顔を起こす。
「まあ、よい。それで、ミユナは?」
「斬首の塔の地下牢に捕らえております。いま、拷問役が尋問をしておりますが、口を開きそうにありません」
「ミユナは口を割らないだろうな。あの娘はああ見えて強情だ。いつだったか、ラリルドが紹介してきた男を警備兵として城の警備に付かせたことがあったな。結果的にその男は城の金品を盗んで姿をくらませたわけだが……」
 確かにあった。ラリルドが「信用できる」とクロスに紹介した男がいる。ラリルドの強い押しにクロスも折れて、その男がクロスの部下になることを了承したわけだが。
 結局、その男の目的は最初から城の金目のものが目的だった。
 盗難が発生し、男が行方をくらました後、クロスとラリルドは懲戒免職、間違えば処刑を覚悟してルルアラトス王のもとへ謝罪へ向かった。
 科された処分は、クロスは邂逅の塔への地下牢にある懲罰房に三十日の監禁。それも両手両足を縛られ、猿轡をされ、目隠しをされた状態でだ。
 ラリルドは直接責任を問われ、同じ懲罰房への六十日間の投獄と、毎日二十回の鞭打ちの罰則を処された。
 懲戒免職を逃れたのは、ヴァルアラトスの強い後押しがあってのこと。実質に被害にあったヴァルアラトスが二人を容赦し、再びヴァルアラトスの元で警備を行うことを強く望んだ。
 こうしてクロスは今ここにいて、ヴァルアラトスの身辺を警護しているのだ。
「あの時、ラリルドに鞭打ちの罰が処されたとき、ミユナが縦になってラリルドを守ったのを覚えているか?」
「ミユナが……」
 ヴァル様は何を言っているのだろうか。まるで、ミユナが昔からこの城にいたとでも言っているような。
 長年ヴァルアラトス城を警護してきたクロスだからわかる。城にいる警備兵、使用人、王族の人間は一人残らず顔と名前を一致させている。知らない人間がいるはずがない。
 ミユナなど過去に城に居たことはない。
 ヴァル様はいったい何を言っているのだ。
「ラリルドが木につるされ、連日鞭打ちの罰を受けているとき、まだ幼かったミユナが現れて、ラリルドに抱きつくように盾になった。処罰人はもちろん、ミユナに退くよう訴えたが、ミユナは退かなかった。ならばと処罰人は言った。「ミユナが変わりに鞭を二十回受けるのなら、今日のところはラリルドを罰するのを見逃そう」と」
 何の作り話であろうか。あの時、確かにクロスは投獄されていて、ラリルドの受けた処罰を目撃したわけではないが、そんな事実は聞いたこともないし、何度も言うがミユナが城に居た事実はない。
「ミユナは処罰人の言ったことを受け入れ、そして二十回の鞭打ちを受けた。二十回の鞭を胸や背中、腹に受ければ、苦痛は想像を絶するだろう。一度鞭打ちの罰を受けた者は、トラウマを受けて、鞭を見るのも嫌になるという。鞭打ちを受けたミユナは三日間、激痛と高熱に浮かされ床に伏せていたが、熱が下がって立ち上がれるようになると、再びラリルドが鞭打ちを受ける場所まで赴いて、ラリルドの換わりに自分が鞭打ちを受けると言い出した」
 クロスは必死に思案した。何のために? ありもしない話を、ヴァル様は何のために俺に話して聞かせているのか。
「結局、ラリルドが受けるはずだった六十回の鞭打ちの処罰の三分の一ほど、幼いミユナが受け持った。あの頑固者のミユナのことだ。口を利かないと決めたら何をしても無駄だろうな」
 要するに、ヴァル様は、ミユナは死んでもしゃべらないといいたいのだ。だが、なぜそんなありもしない逸話をクロスに聞かせたのか。何の意図があるのか。
 ひょっとして、ヴァル様は今の話を真実であると信じ込んでいる? なにか、ヴァル様に異変が起ころうとしている? その前兆なのではないか?
「どうした、クロス。なにか気がかりでもあるのか?」
「……いえ。でも、ご安心ください。ミユナには口を割らせます」
「いや、いい。口を割らせる必要はない」
「しかし、それではヴァル様の命にそむいたまま放置することに」
「放置はしないさ。だが、報告の必要はない。自ら異世界に赴いて、おおよそは理解したつもりだ。だが、ミユナには罰則が必要であるのは間違いない。しばらく地下牢に閉じ込めて置け。具体的な処罰はおいおい考えることにしよう」
 そんな悠長な。言いかけて、クロスは口をつぐむ。
「それより、クロス。私からお前に話しておきたいことがある。異世界のことだ。私からお前に話して聞かせよう。そして、次は私と一緒に異世界に行くのだ」
「私が?」
「一ヵ月後。それまでに「次元径間鑽孔装置」には改良を加えておく」
「もちろん、お供できるのならばこの上ないことですが、なぜです? 異世界には何があったんですか?」
 ヴァルアラトスは「ふ」と音を立てて笑った。
「人が居たよ。二つ目族がな」
「二つ目族が? 異世界はこちらの世界と同じように、知的な種族が居るというのですか?」
「そうだ。意思の疎通が可能な二つ目族がわんさかな」
「まさか……」
 異世界とは、稚拙な想像かもしれないが、何も実りのないやせた荒野が広がっているか、もしくはその逆。見たこともない植物が生い茂る原生林。そんなイメージでしかなかった。
「異世界は、こちらの世界よりもっと科学が進んでいるようだった」
「科学?」
「そう。物の理を解釈し、利用する技術。少ない時間にすべては見れなかったが、さまざまな見たこともない装置が私を取り囲んでいた」
 なんて危険なまねを。ヴァル様はご自身の身の大切さを理解していない。万が一のことがあったら、この国は底に落ちる。
 クロスは腹立たしい気持ちを押し殺して言った。
「警備主任として言わせていただきます。二度と、このような危険な行為は謹んでください」
「すまなかったな。だからこそ、今度はお前も一緒だ。一ヵ月後。心の準備をしておけ」
「ヴァル様は……」
 言いかけて、口をつぐむ。この続きは言っても無駄だ。
 ところが、ヴァルアラトスは「どうした? 言ってみろ」と言葉を促した。
 クロスは逡巡したが、たずねることにした。
「ヴァル様は異世界に干渉して、異世界をも支配なさるおつもりですか?」
 ヴァルアラトスは笑みを作って肩をすくめて見せた。
「前に言ったことがあったかな? 二つ目族は、本当の意味で統治されなければならない。それを支配というならば、そうかもしれないな」
 あいまいな言い方で言葉を濁すヴァルアラトス。これ以上の問いはヴァル様を不愉快にさせる。
 クロスはそれ以上はたずねない。
 何もかもが不可解で、到底信じられない。
 いま、ヴァルアラトスが言ったことが事実だとも思えない。所詮、ヴァルアラトスが考えていることなど、クロスには遠く想像に及ばないのだから。

 

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